東京医科大学八王子医療センター 脳神経外科 | 若手医師からのメッセージ

若手医師からのメッセージ

大塚 邦紀

医師として、また人間としてのスキルを高め、多くの患者さんに役立つ脳神経外科医を目指します。

救急医療に携わることのメリット

 出身大学は東京医科大学で、平成18年度卒業です。去年(2012年)、脳神経外科専門医をとって、今年、脳卒中の専門医をとり、つい最近、神経内視鏡の認定医もとりました。しかし、まだこれといった専門は担当しておらず、幅広く患者さんを診ています。
 脳神経外科の場合診療範囲が広いため、若手のうちはいろいろな分野の病気に触れてみて、ゆくゆくは自分が興味を持てる専門性を身につけていくことになります。そういった点においても、八王子医療センターは3次救急の指定病院ですので必然的に多くの病気と向き合うことになるため、脳神経外科医として自分の将来を見極めやすい環境であることは間違いありません。また、救急医療に携わることは、脳神経外科医としての根っこをつくる修行の場としても最適な環境であると私は考えています。仮に将来、自分が専門性を持った医師となったとしても、運ばれてきた患者さんが自分の専門外の病気でも、戸惑ったり、躊躇することなく対応できるはずです。なぜなら、オールラウンドに患者さんを診ることが求められる救急医療の現場で培われたスキル・ベースが備わっているからです。
 もちろんこれは、将来自分が「どんな医師を目指すか」とか「医師とはどうあるべきか」といった、その人なりの『医師観』のようなものとも関係しますが、少なくとも、脳神経外科医として「より多くの人に役立ちたい」と考える人であれば、得るものは非常に大きいはずです。

人の命を預かる覚悟と心がまえ

 そもそも医師を志したのは父が耳鼻科医であったことが大きなバックグラウンドになっています。兄も医学部を出て現在医師として働いていますので、ある意味自然な成り行きで医師を志したというのが本音でしょうか。その時点では、さほど大きな決意のようなものはありませんでした。
 ただ、実際に一歩踏み出す上ではそれなりの覚悟や心がまえも必要でした。臨床医というのは、ある瞬間ではその人の命を預かる立場にもなり得るわけで、患者さんのみならずご家族の方々にも同意を得て手術や治療を行う説明責任があります。そうした場合、自分が発した不用意な言葉一つで、その人たちの気持ちをどん底に突き落としてしまうことにもなりかねない。つまり、医学のスキルや知識だけではだめなのです。病院実習でそこを真剣に考えて「本当に自分にできるかな?」と自問自答したこともありました。
 それこそ最近は、医学部を出ても臨床に行かず研究を志す学生さんも少なくないようですし、一般企業でも医学部出身者の需要は高いようです。患者さんの命からご家族の思いまで一切合財を引き受けずとも、学校で学んだ知識を活かすフィールドは他にもたくさんあるわけです。ただ、その一方で「それで本当に満足できるのか?」という心の声に導かれて現在の私があるわけです。もちろん今では天職だと思っています。

緊急時にこそ平常心を保つこと

 後期研修で脳神経外科医になりたてのときに、先輩の医師から言われた言葉が心に残っています。それは「迷ったら、やれ」というものです。新人時代は、夜間の当直を一人でやっているときに救急の患者さんが運ばれてきたときなどは、すぐに手術をした方がいいのか、或いは、しばらく様子を見た方がいいのかが判断できずに迷ってしまうことがありました。そうしたときは「やる」ことが最善策なのだと教えられたのです。
 率直なところ、その判断がどのような結果をもたらすかは「やってみなければ分からない」というのが真実です。これは脳神経外科に限らず、緊急を要する臨床であればどのような病気でも同じです。しかし、その判断ができるのは、その現場に居合わせた医師をおいて他にはいません。にもかかわらず、そこで医師が思案に暮れて、なかなか判断することができなければ、貴重な時間を無駄に過ごすことになり、その1分1秒が患者さんにとっての大きな不利益につながることだってあるのです。
 場数を重ねて私が実感するのは、緊急時に医師に求められるのは平常心です。判断をすること自体は当然のこととして、ご家族に手術の話をするにしても、言葉が詰まらないように話すことが肝心です。医師の方が流暢に話をしないとご家族は不安に思います。つまり、緊急を要するときほど冷静になれることが、臨床医に求められる大事なスキルでもあるのです。

ストレスとは無縁な職場環境

 八王子医療センターで自分のキャリアをスタートさせる決め手となったのは、何をおいても「医師がストレスなく働ける病院内の環境」です。学生時代の友人たちが働く職場の中には、看護師さんや検査技師さんなどと医師の間で確執があるところも少なくないようです。ここに問題があると、医師の本分である「患者さんに対する最適な治療の提供」を行うことができず、ここで頭を抱えている人が少なくありません。
 検査にしても手術にしても、小さなこと1つとっても間違いは許されません。ところが、メディカルスタッフとのコミュニケーションが上手くいかず、必要以上に気を使ったり、相手の顔色を伺いながら頼みごとしたり。若手であるがゆえに、本来考えなくていいところまで医師の方が気を使い、そのことでストレスを抱えていれば、何らかの拍子に間違いを起こしてしまうことにもなりかねません。そうしたものが完全にここにはないので、仕事をする上でのストレスも皆無です。案外見逃されがちな要因ではありますが、これは医師にとってこれは非常に大きなポイントです。
 八王子医療センターの脳神経外科は、救急医療チームや神経内科との連携が優れているとよく言われますが、我々を直接的にサポートしてくれる看護師や検査技師の方々とのチームワークも大いに誇れるポイントだと思います。