てんかんは治療技術の進歩により、多くの患者さんが発作から解放された生活を送っています。しかしながら「薬を服用する」という患者さんの心理的な負担は解消されにくく、さらに、発作がおさまらない難治てんかんの場合は、カラダ・こころ・社会面においても発作の影響が深刻です。
このように、さまざまな問題を抱えるてんかん患者さんへのケアは、狭い範囲の診断や治療にとどまらず、てんかん専門医をはじめとして、多様なスキルをもった医師たちが、診療科を越えた院内連携を行いながら万全にケアすることが重要です。このようなケアシステムの構築を「てんかんセンター」と呼びます。
システムの構築条件は多岐にわたり、それらが完備された病院は「全国てんかんセンター協議会」の会員として認定(全国で20施設、東京都で6施設)されます。八王子医療センターもその一員となっており、その特色は立地的な条件から、南多摩地区以外の大月、上野原、富士吉田、甲府、青梅など幅広い地域から患者さんが訪れています。
「全国てんかんセンター協議会」が定める認定条件は以下の通りです。
- 1)てんかんセンターに必要とされる機能
- ◎ 複数の診療科による診療科の枠組みを超えたチーム治療
- ◎ 安全管理に配慮した発作時脳波ビデオモニタリング
- ◎ てんかん外科適応の判断と外科治療(連携施設での対応を含む)
- ◎ 地域におけるてんかん診療連携ネットワークの構築
- ◎ 地域の1次2次診療医の教育
- ◎ 治験を含む新薬へのアクセス
- ◎ 患者家族等の教育
- ◎ 社会啓発活動
- ◎ てんかんの臨床研究
- ※この他、更に高度なてんかんセンターでは、SPECT・PET、MEG、ワダテスト、頭蓋内脳波
検査、難度の高い外科治療、食事などの非薬物治療も行われる。
- 2)人材について
- ◎ てんかん専門医もしく同等の医師(神経内科、小児神経、脳外科、精神科等)がいること
- ◎ てんかんに熟達した看護師、脳波検査技師、薬剤師がいること
- 3)術後のケアについて
- ◎ 精神科的ケアへのアクセス
- ◎ 神経心理士
- ◎ ソーシャワーカー
- ◎ リハビリテーションスタッフ
- ◎ 栄養士
- ◎ 教育や福祉の専門職への適切なアクセス
- ※同じ施設内あるいは連携施設内にもつことが望まれる。
- 4)治療計画について
- ◎ てんかんの診断と治療
- ◎ 内科的併存症
- ◎ 精神医学的併存症
- ◎ 妊娠と出産
- ◎ 認知機能
- ◎ 社会機能
- ◎ 雇用の状況
- ◎ 教育の状況
- ◎ リハビリテーションのニーズ
- ◎ 患者家族の教育ニーズ
- ◎ 外傷と安全についての評価