東京医科大学八王子医療センター 脳神経外科 | 頭部外傷

小児・内視鏡疾患

大塚 邦紀 大塚 邦紀

親御さんと時間をかけて話し合い、納得できる治療方針を決めていきます。

小児から大人まで包括的な医療体制を

 小児脳神経外科は、先天性奇形(二分脊椎、くも膜嚢胞)や水頭症、脳腫瘍、血管障害、てんかんなどの病気を持つ15歳以下のお子さんを対象とする医療を提供します。これらの病気は生まれた時から認められる場合もあれば、乳幼児期や幼児期、学童期になってから発症してくることもあります。
 小児脳神経外科で課題になるのは、15歳を超えた子ども達への継続的な医療支援です。小児医療は15歳を超えると、基本的に診療の対象外となります。では、その後の子どもたちをどこで診るのか。小児から一般への治療支援のスライドと、その線引きのタイミングが問題になります。本来は、同じ病院内に、小児から大人まで包括的な診療体制が整っていることが望ましいのですが、子どもの病態まで診ることができる医師はなかなかいないのが現状です。したがって、それらをトータルにフォローして行けるのが、東京医科大学八王子医療センターであり、子どもが成長しても一貫した医療を提供できる場であることを目指しています。

保護者と医師の二人三脚で治療に臨む

 脳の病気は、子どもの成長過程で障害が残り得るケースがままあります。そうした病気の実態と、それに対する予防・治療の方針を、ますは親御さんにご理解していただくために、治療方針(手術)の説明、またそれを共有していくことが大事であると考えます。
 乳幼児はもとより、子ども自らが治療に対する意思決定を行うことは困難です。あくまでも決定権は保護者の方に委ねられるのです。したがって、保護者の方とじっくり時間をかけて話し合い、医療を受ける側・施す側が互いに納得できる治療方針を決めていくことも、私たちの役割です。
 親御さんにとっては非常に厳しい選択を強いられることもあるでしょう。ご両親で考え方が違うというケースもあるでしょう。第一に考えるべきは、病気と闘っている子どものことですが、そういった親御さんの精神的ケアも行いつつ、親御さんと医師が二人三脚で、足並みを揃えて治療に臨むことこそが、成人と小児の医療の大きな違いであり、一番の難しさではないかと思っています。

内視鏡手術で、負担とリスクを軽減させる

 脳神経外科の手術は頭を開いて行うのが一般的でしたが、近年では内視鏡手術の方がさまざまな側面からリスクが少ないと考えられています。
 内視鏡手術のメリットは、低侵襲(患者の負担が少ない)、手術時間の短縮、感染リスクの低下、手術創が小さい、手術後の早期回復にあります。そもそも内視鏡手術は、極力負担をかけたくない小児医療から発展してきた技術で、それが大人の手術にも応用されているのです。
 内視鏡手術の適応とされる病気は、脳出血の血腫除去、脳腫瘍の生検、下垂体腫瘍や水頭症やくも膜嚢胞などが挙げられます。その中でも、水頭症はシャント療法の方がいまだ一般的です。しかし、シャント療法はシャントという管を永久的に入れなくてはならない治療であるために、感染症のリスクや患者の負担が否めません。そこを考えると、内視鏡で治療できる水頭症の場合は、内視鏡手術も選択肢の一つとして提案します。また脳腫瘍や脳出血で頭の中に長期間、管を入れておかなければならない場合は、内視鏡で違う通路を作ることや血を吸い取ったりすることで、管を早めに抜くことも可能になりえるので感染症のリスクは下がります。この他、鼻の奥に位置する下垂体線種の場合は、すべて内視鏡で治療できます。内視鏡治療については、これからさらに医療機器と技術が高度化していくはずです。

大塚 邦紀